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教室にも帰れず、誰にも会いたくない俺の足は、自然と屋上に向かっていた。
まだ冷たい風が吹く春先は、屋上には誰もいない。
俺は端の方で縮こまっているしかなかった。
悲しすぎて泣けないのか、それとも覚悟していたことと分かっていたからか、とにかく涙は出なかった。けど、胸のところはズキズキしてて……。
こんな時に弁当なんて食べれる訳がなかった。それに、おかず一緒だし……。
もったいないけど、捨てようと思っていると、背後から大きなお腹の音が聞こえた。
振り返ると、俺の持っている弁当を見てよだれを垂らしている……男子生徒。しかも、麗に負けず劣らずの美形さんだった。
髪は染めているのか、銀色に輝き、目はぱっちりとしている。顔立ちは麗と違って、可愛い系なんだろうな。身長は俺よりあると思うけど。
「……」
「……食べないんですか?」
と、口では言っているけれど、彼の目線はこの弁当から離れていない。絶対狙ってるだろうな。
「……食べないから、代わりに食べてくれない?」
「はい頂きます」
言うや否や、俺の手から弁当を掻っ攫うと、手を合わせてがつがつと食べ始めた。
しばらく無言で食べ進める男子生徒。美味しくないのを無理して食べてるのかと思ったけれど、たまにすごく嬉しそうな顔するから大丈夫なんだろう。
「美味しいですよ、このお弁当」
弁当の半分を食べきった辺りで、男子生徒が言った。……まだ十分しか経ってないけど、喉に詰まらないのかが心配だ。
「そう、口に合ってよかった」
と、返事をしたのに、またもや無言で食べ始める。
俺は緑茶のペットボトルを開け、そっと男子生徒に手渡した。男子生徒は弁当の中身を一気にかき込み、緑茶も一気飲みをして、ぽつりと言った。
「御馳走様でした」
「……お粗末さまでした」
あまりの速さに、俺はそれを言うことしかできなかった。
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