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食べ終わったかと思ったら、いつのまにやら男子生徒の脇にあったレジ袋から、三個で一パックのプリンを取り出し、そのうちの一個を俺に差し出した。
「え……」
「あげます。お弁当くれたお礼ですよ」
「あ、ありがとう」
お礼を言うが、男子生徒は表情を変えずにプリンを食べ始めた。
あ、左利きなんだ。
黙々とプリンを食べ進める男子生徒。俺もそれに従って、黙々食べることにした。
「……」
「……」
「何か喋って下さいよ」
「……ええ?!」
なんかって、何喋ればいいのか分かんないって。
戸惑っている俺とは反対に、男子生徒はプリンを一つ空にし、二つ目のプリンに手をつけ始めた。
「……名前と学年、何ですか?」
「あ、えっと、大谷 実。二年だけど」
「大谷先輩ですね。了解です」
なんて言いつつ、男子生徒はレジ袋からコーヒーゼリーを出して食べ始めた。
その後の会話が続かない。なんて思ってたら、もう一度男子生徒の方から話を振ってきた。
「僕が名前聞いたんですから、先輩も名前聞いてくださいよ」
「あ、ごめん。えっと、名前なんて言うの?」
「はい!一年D組出席番号5番、綾瀬 龍一(アヤセ リュウイチ)です。皆からは『あやや』とか『あやちゃん』と呼ばれてます」
と、元気よく敬礼しながら答えてくれた。敬礼なんてしなくても、良かったんじゃない?
「あややって、アイドルみたい」
「はい。自分でも気に入ってます。でも、先輩にはりゅうちゃんって呼んでほしいです」
流石にりゅうちゃんとは呼べないので、りゅうと呼ぶことにした。
りゅうはもう、コーヒーゼリーの三つ目を食べようとしていた。
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