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りゅうは慣れているのか、物を無理やりどかしてどんどん進んでいく。台所にたどり着いたりゅうが、「適当に座ってて下さい」と声をかけるが、何処にそんなスペースがあるというのだろう。
俺は小さく息を吐き、近くにあった洗濯ものの山を崩しにかかった。
「お待たせしまし……おお」
りゅうが軽く目を見開いた。そりゃそうだろう。だいぶ片付けたからね。
とりあえず、洗濯ものは全て畳み、散らかっていたものは出来るだけまとめた。掃除機もあればかけてしましたかったが、生憎何処にあるのかが分からなかったので、何故かドアノブに引っ掛かってた箒を使って、掃いてみた。
「すみませんねぇ、わざわざ掃除させてしまったみたいで」
「いやいや。俺が勝手にやった事だし」
りゅうが申し訳なさそうに言う。けれど、俺が勝手にやったことなので、気にしなくていいのに。
とりあえず、掃除によって姿を現したソファに座る。りゅうがその隣、りゅうの膝に子猫が乗った。
「その子、りゅうのペット?」
「はい。実家から連れてきたんです。名前は『ショコラ』っていうんですよ」
「へ、へー……」
一応、子猫の名前が食べ物の名前ではないかと予想していた俺であったが、軽く涎を垂らしかけているりゅうを見て、いつの日か本当に猫を食べてしまうんではないかと不安になった。
りゅうから受け取ったカップには、コーヒーが入っていた。俺は普通にミルクを少しと、砂糖を二つ入れたが、りゅうはミルクを沢山、砂糖を十個は入れていた。
すごく甘そうだなと思っていると、りゅうがこっちに身体を向けた。
「先輩。僕、先輩に言いたいことがあるんです」
「え、ああ。俺もあるよ。りゅうに言いたいこと」
「いえ、それよりも先に、僕の方から言わせて下さい!」
りゅうが少し強めに言う。俺は頷き、りゅうの言葉を待った。
りゅうは膝にいたショコラをどけると、深々と頭を下げ、低くけれどもはっきりした声で言った。
「勝手な事をして、申し訳ありませんでした……」
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