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突然のりゅうからの謝罪。予想はしていたので驚きはしなかったが、何も言えなかった。
俺が何も言わないことをなんと思ったのかは知らないが、りゅうは俯いたまま続けた。
「僕、我慢できなくて。カッとなって、殴って……。僕があいつを殴ったら、先輩の立場が悪くなるって分かってたのに、押さえられなくて、暴れて。ごめんなさい、迷惑掛けて……ごめんなさい」
肩を微かに震わせながら、「ごめんなさい」と繰り返すりゅう。
俺はそんなりゅうに、そっと呟いた。
「謝らないでよ。俺、怒ってないし」
「でも!!」
やっとりゅうが顔を上げた。と思ったら、その顔は今にも泣き出してしまいそうで。
いや、俺の顔を見た瞬間に、ボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。
涙を拭ってやりながら、俺は言った。
「りゅうは俺の代わりに怒ってくれたんでしょ。そうさせちゃったのは俺だし」
「でも、でも……僕のせいで、先輩が、先輩が」
くしゃりと歪んだ表情で、りゅうが自分を責める。俺は首を横に振った。
「俺は大丈夫。体力は無いけど一応逃げ回れるし、親衛隊に絡まれるのも慣れてるしさ。こっちこそ、ごめん」
「謝らないでください!先輩は、悪くな、い……」
その後の言葉が続かない。りゅうが、本格的に泣きだしてしまったからだ。
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