1628人が本棚に入れています
本棚に追加
声を上げながら泣くりゅうは、まるで子供の様で、失礼かもしれないが、可愛いと思ってしまった。
「ちょっとりゅう、何もそこまで泣かなくたっていいんだよ」
よしよしと、頭を撫でながら慰める。その手を掴まれた。掴んだのは勿論、りゅうだ。
「……りゅう?」
「……泣きたくもなりますよ。だって、僕は好きな人さえ満足に守れなかったんです。それなのに何もできない、自分に腹が立って、悔しいんです」
俺の手を掴んでいるのとは反対の手は、爪が食い込むのではないかという位握っている。それほど悔しがっているということだろう。
「ねぇ、りゅう。やっぱりその好きな人って言うのは、俺のこと?」
「当たり前じゃないですか。他に誰がいるっていうんです?」
いやまぁ、分かってはいたけどさ。そこまではっきり言われると、なんか照れる。
「……あのさ、前にも聞いたかもしれないけど、俺のどこがいいの?」
俺自身、平凡中の平凡だってことは理解している。りゅうみたいな美形には、もっと釣り合う人がいると思うのに、俺のどこが良いんだろうか。
俺の質問に、りゅうは涙を拭いながらきょとんとした表情になった。
「どこって、全部です。先輩のくるくる変わる表情、先輩の作った料理、先輩の優しさ……他にもいっぱいありますけど。とにかく僕は、先輩のそんなところに惚れたんです」
……いつも思うけど、よく本人を目の前にしてそんなことが言えるな。俺だったら恥ずかしくて赤面する。
あれか?これが美形と平凡の差なのか?
最初のコメントを投稿しよう!