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なんて思っていると、りゅうが聞き返した。
「逆に聞きますけど、先輩は僕の事、嫌いなんですか?」
りゅうからの質問は、当然と言えば当然だった。りゅうは俺の事を好きだ好きだと主張するが、俺はそれに返答したことがない。りゅう自身も気になっていたのだろう。
俺は少し考えてから答えた。
「……よく、分からない」
麗と付き合っていた時は、本気で麗のことが好きだった。はずだ。けど、りゅうと会ってから麗への気持ちが揺らいだ。
『好き』という気持ちが、よく分からなくなってしまったのだ。
俺の表情から何かを感じたのか、りゅうはすぐに謝った。
「ごめんなさい。先輩を困らせる気は無かったんですけど……」
「りゅうのせいじゃないよ。さ、泣き止んだならプリン食べよ」
やや強引に話を変える。りゅうはまだ気にしているのか、浮かない顔のままだったが、プリンと聞いて迷っているようだ。
結局、食欲に負けて大人しくプリンを食べ始める。
俺はそんなりゅうに言った。
「りゅう。学校来たらさ、麗に謝ろう」
「ぅえ……」
予想通り、心底嫌そうな顔をするりゅう。俺はかまわず続けた。
「りゅうが嫌なのは分かるけどさ。ほら、顔面殴っちゃったじゃない?一応でも、謝った方がいいよ」
「えー……」
「……俺も一緒に謝ってあげるから」
苦笑しながらそう言うと、渋々ながらも頷くりゅう。
どちらが悪い。とまでは言うつもりはないが、りゅうと麗には、憎んだり憎まれたりというような関係になってほしくなかったのだ。
りゅうと謝る約束をしっかり取り付け、その日は門限ギリギリまでりゅうのところで過ごした。
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