border1 -細き足の珍獣-

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「ったく…酷い目にあったな」 不機嫌そうに銀髪の男は廊下を歩く。 彼の名前はフォード・フレッドリィ。 フリーの傭兵である。 「もう、今日は寝よう」 フォードはそう呟くと、自分の部屋への道を歩きだした。 ここで説明しておくが、彼らが生活しているのは地下に建設された都市型シェルターの中である。 地上には…とある事件が原因で住むことができなくなってしまった。 特に誰とも出会うことなく、フォードは自分の部屋にたどり着く。 ぷしゅう、と何かが抜けたような音を立て、金属製の飾り気のない扉が開いた。 特に返事が帰ってくるわけでもないが、儀礼的にただいま、と小さな声で言い、部屋にはいる。 「やァ、おかえリ」 帰ってくるはずのない返事に少しフォードは警戒の色を示したが、自分の部屋のベッドに腰掛けている男を見ると、安心したような、あきれたような表情をした。 「ジミー…俺の部屋に勝手に入って何をしているんだ?」 「何、今日モ戦場から無事ニ帰ってきた友人と飲もウと思っただけサ」 そう言ってベッドに腰掛けている男、ジミー・フレデリックは、ベッドの下から緑色の酒瓶を取り出した。 「ワインか。ちょうどいい、飲みたいと思っていた。だが…」 フォードはジミーの口元をみる。 ジミーの口元には、ガスマスクのようなものが装着されている。 報酬目当てで軍の実験体になった結果、ジミーはニュードを吸わないと生きていけない体になっている。 そのため、日常生活の時はあのガスマスクのようなものでニュードを摂取しているのだ。 「お前はその口でどうやって飲むつもりなんだ?」 「ストローがあれバ問題ないサ。ちゃんトここニストローを持ってきてあル」 そう言って、ジミーはポケットからストローを取り出す。 「…ふむ。それでは」 フォードは食器棚から出してきたワイングラスにワインを注ぐ。 「「乾杯」」 チン、と澄んだ音がした。
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