僕達は何も知らない

prologue1

4月6日(水)

｢失敗した……｣

目の前には長蛇の列。

最後尾では定員さんが『こちら最後尾』と書かれた板を掲げて列の整理をしている。

ざっと見積もっても会計にたどり着くまで３０分以上待つだろう。

『波瀬駅前通りにて大好評フリースドーナツ本日オープン！』なんてチラシに釣られて開店同時に来た俺がバカだったのだ。

こうなることぐらい十二分に予想出来ただろうに……
俺は溜め息を吐いて大人しく最後尾に並んだ。

簡単に現状をまとめると、俺こと若槻(ﾜｶﾂｷ)京(ｷｮｳ)は波瀬駅前通りにて本日開店のフリースドーナツという今若者で大人気なチェーン店の列に並んでいる。

店名の通り売っているのはドーナツ。

オリジナルなドーナツの種類が多数あり、それが人気の一つである。