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そして放課後──、
「恩田健太郎はいる!?」
になるや否や、轟音とともにドアを解放し、三田倉有紀は現れた。突然の怪人物の登場に、当然のごとくクラス中の視線が彼女に集まる。俺もまた然り。
三田倉は相変わらず派手な風貌で、ぐるりと教室を見回すと、間もなくして俺を発見した。
「あ、いたわね。恩田、ちょっと来て」
ちょいちょいと手招き。まあ断る理由もないので素直に従ってみる。
「なんだ? 2年のフロアにまでわざわざ……、あ、言っとくけど俺は目薬持ってないぞ」
「違うわよ。如何にしてあのメールのミッションを遂行するか、これから真剣に考えるの」
「はあ?」
何を言い出すかと思えば、やっぱりメールがらみか。
「行くわよ」
「どこに?」
「ファミレス。決まってるじゃない」
──決まってるのか?
「なんで?」
「どうせ暇でしょ?」
くっと片頬を吊り上げ、俺に軽い笑みを寄越した三田倉は、少し楽しげに見えた。
「ほら、荷物持って! 出発!」
× × ×
「それではこれより、神の啓示具現化委員会第一回ミーティングを行います」
ファミリーレストランというのはこういう客を嫌うんだろうなと思う。目の前には大学ノートに鉛筆消しゴム目薬、あとドリンクバーのグラスが2つ。料理は無い。
目の前の三田倉は長居する気満々と行った感じで、羽織っていたブレザーを傍らにたたみおいていた。
「もうちょいマシな名前なかったのか?」
「あら、レッテルに左右されるなんて小さい男ね」
なんだよそれ。
「重要なのは中身よ」
素晴らしい会議にしましょうね。と言い放つと三田倉はゴホンと一つ咳払い。
「本日の議題は、『如何にして二階から目薬をさすか』よ」
だろうな。それ以外だったら寝耳に水ってやつだ。
「さあ。恩田、なんかアイデア無い? ねぇ?」
目をキラキラさせながら聞いてくる。本当に仕切りたがりである。
「狙撃手が腕を上げる」
求められたので、とりあえず目下の問題点を指摘してみた。
瞬間、三田倉のこめかみ付近に青筋が……。
「あははー、先輩って面白いんですねー。それはどういう意味でしょうか?」
笑顔と敬語が怖かった。
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