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乾いた大地の上を風が舞う。
吹き上げられた砂塵は風に従うだけで、自分の意志など無いのだろう。
何となく今の世界の有り様に似ているな、と青年は思った。
紅いコートを羽織り、身の丈程ある大剣を背負いし銀髪の青年は、荒野をただ一人歩く。
その足取りはしっかりとしたもので、目的地が明確であることが窺える。
しかし、青年は突然足を止めた。唐突に現れた背後の違和感は、青年を警戒させるには十分なものだったからだ。
「ライトニング・ジ・エンド。すまないが、俺と――」
青年――ライトニング・ジ・エンドは突然の呼び掛けに僅かな動揺を見せながらも、それに応じて振り返る。
黒いコートに黒いズボン、黒い手袋に黒い靴。全身黒という出で立ちの、まるで影のような男がいた。
黒いサングラスによって相手の心情が読み取れないものの、何かを躊躇っているのが少しだけライトニングに伝わった。
「俺と、闘ってもらう」
諦めや恥じらい等の色が混じった言葉が男の口から漏れる。
ライトニングは戸惑った。
今まで、自分の名を問い、問答無用に挑んで来た者ならいくらでもいた。その大半は相手にせず、やり過ごした。
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