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だが、今回は勝手が違う。
相手は自分のことを知っているようで、かつ低姿勢で挑んで来ている。
初めての体験だった。
「えーと……、あんたと俺、どこかであったっけ?」
そう言いながら、ライトニングは男を観察する。
武器。魔力。たたずまい。
・・
どれも、なにも、無いことにライトニングは驚いた。
武器は見当たらず、魔力は感じられず、たたずまいからもこれといって何も掴めない。
なんでもない、ただの男。それがなぜ、申し訳なさそうに闘いを挑むのか。
「ん、俺達は初めて会う。だが……、闘ってもらわないと俺は帰れないんだ」
「帰れないってなんだよ? ようするにあんたはケンカしたいだけ?」
「んー……。いや、全力で闘ってもらいたいから、ケンカどころでは済まないかもな」
ライトニングは一つため息をついた。魔力のかけらも感じない男にケンカを挑まれても、やる気は出ない。
ライトニングは選択した。
煙玉で逃げるか、仕方なくケンカに付き合うかを。
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