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「おい、人の家の前でお前は何をしてるんだ…」
「追い出されちゃって……ごめんなさい」
「………」
謝りながらもどかない僕をお兄さんは怒るどころか、寂しい、悲しい、苦しい、辛い、のがまるでお兄さんに伝わったかのように、お兄さんは僕の頭を黙って撫でてくれたんだ…。
ひそかに血の匂いもしたけど、ただお兄さんの小さなぬくもりが僕には温かくて、匂いなんてどうでもよくなった。
「入るか?」
「…うん」
お兄さんの目は何も見えていないかのように冷たい瞳だったけど、僕にとっては安心できるものだった。
傷だらけで、汚い父のつけた痕もいっぱいな僕を、けして気持ち悪いといった目で見てはいなかったから…。
初対面のお兄さんに家へと入れられるなんて普通なら怪しくて警戒するのに、お兄さんなら何をされてもいい気がしたんだ…。
お兄さんのことを何一つ知ることがなくても…。
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