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「………」
どうやらぬいぐるみを気に入ってくれた様子だ。ここまで喜んでくれるなら、買ったかいもある。
それに、与守鴉を守るためのぬいぐるみでもある。多少離れても発信器があるから大丈夫だろう。
与守鴉がぬいぐるみを離さないかぎりは……。だが、ぬいぐるみだけじゃ不安だな。
「これも、つけとけ」
「?」
「ブレスレットだ。ぬいぐるみと同じ発信器がある。もしもの時のためだ…このブレスレットも特殊で、俺以外外すことはできない」
「うん…。なんかお兄さん、僕の心配ばかりしてるね」
「……お前じゃなきゃ、ここまでしない。ましてや、計画なしの殺人なんてな」
「なんか嬉しいな」
「過保護やねぇ…酷心?」
「…!」
俺の車の前には男が一人…久しぶりにあったのもあり、驚きはしたが何故ここに?
「……だ、れ?」
「大丈夫だ」
「うん…」
与守鴉を不安にさせないように片腕で抱き締める。
「随分優しくなったもんやなぁ…それで?その子どないするんやろか?殺す気はないみたいやね?しかもここらの服や物まであげて…。そないな子供をこちらの世界に連れ込むん?今なら施設の方に裏から手配するで?」
こいつは嘘だけはつかないから信用はできる奴だ。だから、与守鴉を渡せばきっと表の世界の普通で平凡な生活ができる施設へ送ってくれるだろう。
だが、生憎俺は……
「気にすることはない。与守鴉は俺が責任を持つ」
「お兄さん・・・」
「人は変わるもんやなぁ…。その意味わかってはるんやろな?」
「ああ」
「わかっとって、その返事…酷心もよう言うたもんや」
「・・・」
この目の前の男が何を言いたいのかはわかる。
俺の住む世界に連れ込めば与守鴉は……
「違う!」
「与守鴉?」
「お兄さんは酷くない!僕が、お兄さんの傍にいたいんだ!たとえ殺人者だろうと……」
「お互い随分好き合ってるんやなぁ…。君、与守鴉って名前なん?」
「お兄さんがつけてくれた。僕、名前なかったから……」
「へぇ…まぁええわ、与守鴉くん?今までみたいに甘い世界やなくなる覚悟してや?まずはコードネームや…登録しとかなあかん」
「コードネーム……」
コードネームを決めれば与守鴉はこちらの世界の人間となるのが確実に決定される。
命を狙われるだろうが、それなら俺はきっと全力で与守鴉を守るだろう。
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