第一章 夢

13/36
前へ
/242ページ
次へ
大学のパイロット養成学科のロッカールームに戻り、耐Gスーツを脱ぎ捨て、ロッカールームから出る。 私服に着替えたが、Tシャツとジーパンだ。 にしても貧相だな。自分。 ホント、笑っちまう。 家に帰ろう。それから行こう。 そして家に帰る。 家は父が10年前、購入した一戸建ての洋風の家だ。 この家に入ったとき、母さんはもういなかった。 その代わり……、と言ったら彼女は嫌な思いをするだろうが、新しい家と一緒に俺には妹が出来た。 入ると、玄関に陽が立ち、俺を出迎えてくれた。 「お帰り!望君。今晩何にする?」 「ごめん。ちょっと出かけるから、帰り遅くなる。…ごめん」 そう言うと、彼女は悲しそうにうつむいた。 「いや、いいよ。望君もお年頃だもんね」 彼女は気丈に笑って見せた。 「違うって。じゃ、着替えたらすぐ出るから」 「……うん。わかった」 彼女の目は恋する少女の目だと気付いてから、もう10年が経った。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加