第一章 夢

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リニア線は時速470㎞で走行する。 30分はあっという間だった。 それはニアの事はもちろんだが、問題は陽だ。 俺は彼女に10年も待たせている。 嫌いとも、好きとも言われないからだ。 彼女が俺のことを好きなのは知っているし、できれば思い出したくない。 彼女にとって俺は恋愛対象かもしれないが、俺にとって彼女は家族だ。 そんなことを鬱々と考えていると、降りる駅に着いていた。 南條市木亜区東30-2。 そこは巨大な豪邸が立ち、かといって成金趣味ではなく、落ち着いた雰囲気が似合う、石造りの古風な屋敷だ。 1655。 予定時刻五分前に到着した。 門の柱に設けられた、インターホンを鳴らす。 『入っていいわ』 ニアの声がした。 どうやらニアの家で違いないようだ。 ギイィィィ!! 門が内側に開く。 コンピュータ制御なのだろう。ひとりでに開いた。 長い中庭には、バラが咲き乱れ、手入れが行き届いていることがわかる。ド素人の俺でも。
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