第一章 夢

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思わずしゃがみ、バラに顔を近づけ、匂いを嗅ぐ。 高級な匂いがした。 「キレイでしょ?」 「え?」 突然声をかけられ振り向くと、ニアが膝に手を突き、前屈みにいた。 白を基調とした着物風ドレスの胸元から、少しだけ谷間が覗く。 急いで回れ右し、バラに視線を落とす。 変だぞ。俺。 こんなガキにドキドキするなんて。 「ようこそ。我が家に」 彼女は応接室で笑った時のように、方頬だけで笑う。 確信犯だな。 「どうも、ありがとうございます。ニア=サーチェスさん」 一応、形式上の挨拶だけ済ます。 やっぱり、俺はおかしい。 そもそも、なぜあの時、こいつに頭を下げたんだ。 今となっては、不毛だろうが考えてしまう。 「他にも待ち人がいるわ。行きましょう。危箱望君」 彼女は屋敷へ歩きだす。 俺は着いていくほかなかった。 なにか、こいつとは長い付き合いになる。 直感がそう語っていた。
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