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思わずしゃがみ、バラに顔を近づけ、匂いを嗅ぐ。
高級な匂いがした。
「キレイでしょ?」
「え?」
突然声をかけられ振り向くと、ニアが膝に手を突き、前屈みにいた。
白を基調とした着物風ドレスの胸元から、少しだけ谷間が覗く。
急いで回れ右し、バラに視線を落とす。
変だぞ。俺。
こんなガキにドキドキするなんて。
「ようこそ。我が家に」
彼女は応接室で笑った時のように、方頬だけで笑う。
確信犯だな。
「どうも、ありがとうございます。ニア=サーチェスさん」
一応、形式上の挨拶だけ済ます。
やっぱり、俺はおかしい。
そもそも、なぜあの時、こいつに頭を下げたんだ。
今となっては、不毛だろうが考えてしまう。
「他にも待ち人がいるわ。行きましょう。危箱望君」
彼女は屋敷へ歩きだす。
俺は着いていくほかなかった。
なにか、こいつとは長い付き合いになる。
直感がそう語っていた。
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