第一章 夢

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彼女は北欧系の血を引くらしいが、日本語が話せるので日本圏で育ったのは間違いない。 薄氷のような白い肌。 薄い唇は薄らと桃色に……。 しかし、そんな彼女の作った弁当(料理)は、本当は食べたくない。 陽の飯は破壊的に不味いからだ。 ある種の生物兵器並に……。 「ほら、食べて?」 上目遣い&困った微笑みに負け今日もこの不味い弁当を食らう。 「い、いただきます」 腹を括り、まず卵焼きを頂く、彼女の一番の得意料理で、ここ数年で飛躍的に上達した数少ないおかずなのだ。 箸でつまみ、口に放り込む。 次は里芋のにっころがし、爺臭いと言われる俺の好物だ。 「……どう?」 陽が問い掛ける。 「おいしいよ」 「やった!」 そして俺は黙々と残ったおかずを平らげる。 最後の一つを食べ終えた頃、始業の鐘が鳴った。
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