栞の憂鬱

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口を動かさず、目だけをまぁちゃんにばれないように移動させる。 まぁちゃんの部屋は、ちぃちゃんやあたしの部屋とは違い、あまり生活感を感じさせない部屋だった。 壁にはモノクロな掛け時計が一つ取り付けているだけ。 その前にはパイプ製のセミダブルのベッドが置かれてあり、青と白のチェックの掛け布団がきちんと畳まれてある。 机の上には教科書と参考書が大きさ別に収納されていて、前にはノートパソコンが閉じられたまま置いてあり、他には何もない。 その横に3段BOXを3つ並べて、上にはコンポとプリンター、中にはスポーツ雑誌とCD・DVDが種類別に並んでいた。 唯一そこの空間が、趣味らしいものを見られる場所だった。 「おい」 「はい?」 突然声をかけられ、あたしの心臓はドクンッと1つ鳴った。 まぁちゃんはベッドに浅く腰かけていて、膝の上に両手を置き、顔の前で手を組んでいる。 「月曜から、7時50分に玄関出て待ってろ」 「えっ?」 「7時50分に玄関出て待ってろ!」 いや……そういう意味じゃなくて、あたしが聞きたかったのは『どうして?』の答えなんだけど。 「でも、あたし7時30分に家を出てるから……」 無理と、最後まで言葉に出来ない自分を可哀相に思う。 まぁちゃんはあたしの言葉を聞くと、思いきり眉間に皺を寄せた。 ひぇ―――――ッ!! あたし……怒らせちゃった? バタバタと逃げ出したい衝動にかられながら、あたしは動けずに、ただただまぁちゃんの顔を見ていた。 「じゃあ月曜から7時50分にしろ」 うぅ……。 「それは……つまり?」 「何が聞きたい?一緒に行くからに決まってるだろ」 やっぱり……。  
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