栞の憂鬱

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「せめて30分に待ち合わせにしない?」 50分に待ち合わせじゃ、余裕がないんだもん。 まぁちゃんは足長いからいいだろうけど、あたしはとろいから遅刻ギリギリだよ。 「あと俺がバイトある日は仕方ないけど、放課後も教室で待ってろよ?」 無視された!? あの……まぁちゃん!? 「休日も同じだから。バイトのない日はうちに来いよ」 …………。 茫然自失。 開いた口が塞がらない……これは違うか。 とにかく……これはあたしの死活問題。 大袈裟だけど大袈裟じゃない!! もしもあたしがフラれなかったら、最低1年はこんな生活が続くわけで。 だからって、決して嫌とか言うわけじゃないけど、心臓がもたない。 こんな気持ちで、まぁちゃんと付き合ってもいいのかなって思うけど、正直まぁちゃんがあたしで満足するわけがない。 きっと1ヶ月も経たない間にフラれる。 そう信じて……いや、祈っていた。 「来週はバイトがあるけど、再来週は休みだから、行きたい所があったら考えとけよ?」 「えっ?」 初めてだった。 まぁちゃんがあたしの意見を求めてきたのは。 単純だけど、そんなことで喜ぶあたしって……やっぱり馬鹿? コンコンッ。 「お兄~。開けるよ?開けちゃうよ?準備はいい?」 ノックと共に、ちぃちゃんの声が聞こえた。 笑いを含んだ声に、からかっているのだと気付いたけど、怒るどころか助かったと感謝した。 だけどちぃちゃんは、ジュースとロールケーキをテーブルに置くと「ごゆっくり」と意味深な笑みと言葉を残して、部屋を出ていった。 「甘いの好きなんだろ?俺のも食っていいよ」 まぁちゃんは、ちぃちゃんが自分の部屋に入ったことを、ドアを閉める音で確認してあたしに言った。  
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