一躍、有名人?

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   ● 栞side story ● 「あら?今日はえらくゆっくりなのね?」 ただ今の時刻7時40分。 いつもならバスに乗ってる時間だけど、今日はまだ家の中。 時間が気になってリビングの中を行ったり来たりしているあたしを、ママが不思議そうに見ている。 「う、うん。もう少ししたら行くよ」 と言ったかと思えば「やっぱり行く」とママの視線に耐え切れず、あたしは鞄を持つといそいそとリビングを出た。 「変な子ねぇ?」 閉まるドアの隙間からママのぼやきが聞こえ、まぁちゃんと付き合っている事実がいつママ達の耳に入るかと気が気でなかった。 慌ただしく玄関を出たまではいいが、まぁちゃんの姿はない。 時計を見ると50分まで後6分もある。 「ちぃちゃんは行ったかなぁ」 先週までは妹のちぃちゃんと登校していたのが夢のよう。 毎日一緒に登校していたから、ちぃちゃんがいないことがすごく淋しかった。 「……まだかなぁ」 家を出ても落ち着かないあたしは、門から身を乗り出しまぁちゃん宅の玄関を覗いた。 するとタイミング良く玄関が開く。 中から現れたのは待ちに待ったまぁちゃん。 あたしは急いで自分の家の前に行き、いかにも覗いてませんよという風に、明後日の方向を見た。 カチャッ。 門の開いた音を確認し、まぁちゃん宅の方を振り向く。 「おはよ」 「!!……お、おはよ」 あたしは身の危険を感じ、思わず一歩後ろに後退した。 だって…… まぁちゃん、めちゃめちゃ不機嫌な顔してるんだもん!! 「急ぐぞ」 まぁちゃんは半分閉じられている目をあたしに向け、早く歩くように促した。 「あ、うん」 まぁちゃんは返事を聞く前から歩き出していて、あたしはまぁちゃんに着いていくのがやっとで、会話をする余裕すらない。  
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