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● 栞side story ●
「栞。俺と付き合え」
「……?」
日曜の夕暮れ。
6月の空は
どんよりとしていて
湿った風が
生温い吐息を吹きかける―――
……って、
はい―――――ぃ!?
あたしは『まぁちゃん』の言葉を理解するのに10秒程かかった。
いや、もしかすると、1分位かも?
とにかくまぁちゃんの爆弾発言に固まったのは事実で、なかなか返事をしないあたしに短気なまぁちゃんは苛々とした口調で言葉を続けた。
「もう1度言う。俺と付き合え」
真っ直ぐに睨み据えるようなまぁちゃんの鋭い視線に、あたしは大きな体を小さくするのに苦労しながら恐る恐る見つめ返した。
「えっと、あの、まぁちゃん?」
「なんだ?」
「何処に?とか言ったら、怒る……よね?」
まぁちゃんは当たり前だとばかりに、大きな目を更に大きくして、怒りをあらわにした。
「お前は俺をおちょくってるのか?」
まぁちゃんの低くドスのきいた声が、あたしに更なる追い撃ちをかける。
「えっ!?あの!そんなこと……」
ないよと言おうとしたあたしの言葉を遮り、まぁちゃんは目を細め、サラサラとなびく前髪をかき上げた。
「どっちなんだ?付き合うのか?断るのか?」
あたしに決定権があるように聞こえるけど、明らかに決定権なんかない。
まぁちゃんのそれは、半ば強制だった。
「時間の無駄だ。早く決めろ。付き合うのか?」
ほら……。
付き合うのか?と聞く所が、強制だよね?
だけど―――
これから先のまぁちゃんとの付き合いを考えると、無下に出来ない。
仕返しが怖いもん。
「う……ん」
怯え震える声なことに、まぁちゃんは気付かないの?
あたしの返事を当然だとばかりに勝ち誇った顔をしてるんだもん。
まじ理解不能だよ……。
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