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まぁちゃんと付き合い出して1週間を過ぎた頃、本格的な梅雨がやって来た。
その日は珍しく朝から晴れていて、天気予報も今日は1日晴れると言っていた。
だからあたしは傘を持って行かなかったのだが―――
ザー……。
HRの途中からぽつぽつと降り出した雨は、HRが終わる頃には勢いを増していた。
「栞ちゃん、傘持ってきた?」
「持ってきてない。だって今日1日晴れるって言ってたから」
見ると、ちぃちゃんの右手には折りたたみ傘が握られている。
「だよね。あたしは置き傘してたんだけど……。多分、お兄も持ってるはずだよ」
「えっ!?」
ちぃちゃんの言葉が意味するものがわかった。
まぁちゃんの傘に入れてもらえということ。
あの……まぁちゃんに?
有り得ない!!
まぁちゃんがあたしを傘に入れてくれるわけない!!
「大丈夫よ。いくらお兄だって雨に濡れてる栞ちゃんの横で、堂々と1人濡れずにいられるわけないわ」
あたしの心が読めたのか、ちぃちゃんは心配ないよと声をかけてくれた。
「そうかなぁ」
「ほら、噂をすれば何とやら。お兄が来たよ」
教室の入口に目をやると、黒い傘を持ったまぁちゃんが目に入った。
「じゃあ、栞ちゃん。また明日ね!」
「うん」
同じ帰り道だからちぃちゃんに一緒に帰って欲しいと思いながら、まぁちゃんの所に向かう。
まぁちゃんはあたしの手に傘がないことに気付き「傘は?」と聞いてきた。
「晴れってテレビで言ってたから、持って来なかったの」
「明日から置き傘しとけよ」
「うん、ごめんなさい」
あたしは何を謝ってるんだろう……。
あたしが傘を忘れたからって、まぁちゃんに迷惑がかかるわけじゃないのに。
そりゃあ、傘を貸してくれたり一緒に入れてくれたなら、悪いなって思うけど―――
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