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「えっ!?」
「何を驚いている?雨に濡れたいのか?」
「いや……」
「じゃあ、もっとそばに来い。濡れるぞ」
ちぃちゃんの言う通りだった。
まぁちゃんは傘を開くと、入るように言ったのだ。
普段冷たいからちょっとした優しさでも、あたしをすごく驚かす。
あたしはまぁちゃんに言われた通りに、まぁちゃんに近付いた。
いつもよりはかなり近い。
あたしとまぁちゃんの距離は、その差15cm程。
だけど―――
「全く……手のかかるヤツだな」
まぁちゃんはそう言うと、あたしの肩を抱きグイッと自分の方へ引き寄せた。
「!?」
突然のことに、あたしはまぁちゃんの腕の中から逃れようと身を引いた。
しかし思いの外まぁちゃんの腕には力が込められており、逃げるどころか逆にもっと密着することになった。
カァ―ッと頭に血が上り、あたしの心臓はパワー全開でドクドクドクドクと波打っている。
あたしは思わず下を向いた。
それでも構わず、まぁちゃんは左手であたしを抱きしめたまま、歩き出した。
「えっ!?ちょ……え~!?」
「嘘ぉ……」
「信じられない!!」
などなど、ブーイングの中をあたしは歩いてるわけで、だけど、いつも気にするブーイングが気にならなくて。
あたしの集中力は、まぁちゃんに全て使い果たした。
右肩はまぁちゃんの胸を感じる。
広く固い胸板を―――
そして左肩にはまぁちゃんの手を。
力強くあたしの肩を掴んでいる、まぁちゃんの手を―――
毎朝満員のバスの中でまぁちゃんには嫌という程密着している。
でもこれは違う。
あたしがまぁちゃんに抱きついてるんじゃなくて、まぁちゃんがあたしを抱きしめている。
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