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その現実が必要以上にあたしをときめかせた。
「あの、まぁちゃん……いくらなんでも、くっつき過ぎじゃない?皆見てるよ」
まぁちゃんと触れ合うことが嫌なんじゃない。
注目の的になることが恥ずかしかった。
「気にするな。気にしてたら濡れて風邪ひくぞ」
「うぅ」
何を言っても無駄だと悟り、あたしは黙って歩くことにした。
そして何となく、ただ何となく、まぁちゃんがあたしに合わせて歩いてくれてるような気がして、ちょっと嬉しかったりもする。
でも……
せめて肩に置いてある手だけでも退けてくれないかなぁと、何気に肩に目をやると全然雨に濡れてないことに気付いた。
あれ……?
あたし、濡れてない?
足元は跳ね返りで濡れてるのに。
不思議に思いまぁちゃんを見ると、右側がビショビショに濡れていた。
「まぁちゃん」
「何?」
不意に漏れたあたしの言葉に、まぁちゃんが反応した。
「あの、肩……」
まぁちゃんはあたしの視線の先を見て「あぁ」と無表情で答えた。
「俺は体の作りが丈夫だから」
笑顔もなく、声のトーンだって低い。
だけど優しさを感じたのは、あたしの考え過ぎ?
もしかしたらあたしが気付かなかっただけで、今までもこんな風にさりげない優しさがあったんじゃないかとさえ思えてくる。
そういえば、まぁちゃんは今までの彼女にはどんな風に接してたんだろう。
昔1度だけ、まぁちゃんの彼女を見たことがある。
ちぃちゃんの部屋に遊びに行った時だ。
ちょうど彼女は帰る所で、玄関で会ったんだ。
あの時の彼女はすごく綺麗な人だった。
サラサラの黒い髪を風になびかせ、透き通る程白い肌が印象的だったのを覚えてる。
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