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「お節介してごめんね。でも余りにも目についたから」
松尾さんは申し訳なさそうに謝ってきた。
その姿を見てそれまでの松尾さんに対する不信感は一気に消え、逆にそういう目で見ていた自分に苛立ちを感じた。
「でもね、さっき言ったことは本当だから。何かあったらあたしを頼ってね」
「ありがとうございます」
あたしはお礼を言い、それから松尾さんと別れた。
3年の教室へ向かう松尾さんの後ろ姿を見送りながら、わかってくれてる人もいるんだなって少し嬉しかった。
女の子が皆まぁちゃんのファンなわけじゃない。
こうして助けてくれる人もいる。
教室へ戻るあたしは、重い足枷が取れたように軽やかな足取りだった。
―*―
「おっ!やっと帰ってきた」
教室に入ると主不在のあたしの席を中心に、ちぃちゃんと山中くんが話をしていた。
「何かあったんか?」
レポートを持って行っただけにしては帰りが遅かったからか、山中くんが心配そうに問いかける。
山中くんはまぁちゃんのファンから助けてくれたあの日から、何かにつけて話しかけてくるようになった。
それまではまともに話したことすらなかったのに、今では3人でいる光景が当たり前になっている。
「大丈夫だよ。先生と少し話しただけだから」
2人に心配をかけることもない。
あたしは躊躇うことなく嘘をついた。
「そっか。ならいいけどさ!何かあったら言えよ」
「ありがとう」
まぁちゃんがいるから山中くんに頼ったりしないけど、心配してくれる人がいるっていいな。
さっきの松尾さんといい山中くんといい、なんだかんだ言ってあたしって幸せ者かも。
あたしは自分の席に座ると、ルンルンで2人の会話に入っていった。
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