栞の憂鬱

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「ぷっ!栞ちゃん……何もそんなに驚かなくても。お兄だって取って食うわけじゃないんだから……多分ね」 た、多分ねって……そんなぁ。 「さっ!栞ちゃんの彼氏様がお呼びよ?行きましょう」 嬉しそうにあたしの手を取り立ち上がるちぃちゃんが、楽しんでるように見えるのは気のせい? やっぱり血は争えないかも。 そういえば、篠瀬家には毎日のように通ってるけど、まぁちゃんの部屋に入るのは初めてじゃない!? だって今までは入る理由もなかったし、大人に近付くにつれまぁちゃんはあたし達とつるまなくなったから――― ドキドキしながらちぃちゃんに続いて階段を昇る。 いつもは左のちぃちゃんの部屋に入るけど、今日は右側のまぁちゃんの部屋。 部屋の前に着くとちぃちゃんがドアの向こうにいるまぁちゃんに声をかける。 「お兄。栞ちゃん連れて来たよ」 すると間髪入れずに「入れよ」と返事が返ってきた。 ちぃちゃんはあたしの方を振り向くと、優しい笑みを浮かべ「だって」と言いながらドアを開けた。 部屋の中からは風に乗ってシャボン系の香りが香ってきた。 これがまぁちゃんの部屋の匂い。 こんな匂いだったんだ。 「何突っ立ってる?」 「ひゃっ!!」 突然目の前に、ドアに手をかけてるまぁちゃんが現れた! あたしは思わず悲鳴を発したんだけど。 「…………」 あたしの目はあたしを見据えているまぁちゃんに釘付けになった。  
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