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顔はもちろんカッコイイ。
だけど―――
白いサマーセーターから伸びている腕は程よい位の筋肉がつき締まっていて、Vネックから見える鎖骨すら美しいと感じる。
そしてサマーセーターにジーンズを穿き熟しただけのシンプルな姿は、そこら辺の着飾るだけの芸能人よりカッコよかった。
こんなに素敵な人が、あたしの彼氏。
でもコンプレックスの塊なあたしは、嬉しさよりも恥ずかしさの方が強かった。
自分に少しでも自信があれば、こんな恥ずかしい想いしないのに……。
あたしはまぁちゃんから目を逸らし俯いた。
「どうした?中に入れよ」
「栞ちゃん?ジュース注いでくるから部屋に入ってたら?入口に突っ立ってるのも変だよ?」
「うん」
2人に心配かけちゃいけない。
あたしは口元を緩め笑って見せた。
だけど、目は笑ってない。
「…………」
「…………」
いつまで経っても動こうとしないあたしに痺れをきらしたのか、相変わらずムスッとしているまぁちゃんが、あたしの手首を掴むと部屋の中へと強引に引っ張り込んだ。
「どこでもいいから座れ」
あたしから手を離し座るように促す。
あたしの手首には、まぁちゃんの体温が残っているかのようにそこだけが熱かった。
あたしは言われた通りに座り込む。
するとまぁちゃんは大きく息をつきテーブルの前を指すと「ここに座れ」と言った。
あたしが腰を下ろしたのはドア近くの片隅だったから。
「……お邪魔します」
今更言うのも変だけど、無意識に出た言葉に顔を紅潮しながら部屋の中心に座り直す。
「…………」
「…………」
呼び付けたのはまぁちゃんなのに何も話しかけてこない。
重苦しい空気に耐えきれず、あたしの心臓はドクドクドクドクと鼓動が速くなる。
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