ヒトツノアイトヒトツノウラナイ

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「あーあ。私の星座、今日最下位じゃん。やる気なくすわ」 私は、毎朝会社に出かける前に必ずチェックする、テレビの星座占いを見て落胆した。 「お前なぁ、そんなくだらないことでいちいちやる気なくしてんじゃねーよ」 あきれた顔でそう言ったのは、同棲して一年たった私の恋人、寿彦(かずひこ) 「くだらなくないわよ。私の1日のやる気はこの占いから始まるんだからね」 私が熱弁しても、あーそうですかとめんどくさそうに手をひらひらさせて、玄関の方へ歩いていった。 「じゃあな、先行くからな」 「え? ちょっと待ってよ。私もすぐ支度するから、途中まで一緒に行こうよ」 「悪いけど早めに会社ついてやることあるんだよ」 言い終わらないうちに、すでに玄関の扉はバタンと音を立てて閉まってしまった。 「なによ、つまんないの」 文句を言いたい相手がすでにいなくなり、私の発した言葉はただの独り言になってしまう。
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