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「アタル。お前、リンゴ畑をなめるなよ?」
甲府を過ぎたあたりで、親父に言われたのを思い出した。
目立った渋滞もなく、高速道路の流れは緩やかだった。
「ある時間を過ぎると、りんご畑は右も左も、全部同じ景色に見えてくるんだ。迷っちまうんだよ。それに夕方になると、りんご畑は姿を変える。りんご畑ってのは往々にして、そういう所なんだ」
「本当かよ?」富士の樹海じゃあるまいし、りんご畑で迷うかよ。
そんな事より、じいちゃんちの柴犬と散歩したり、川で虹鱒を釣ったりして連休を楽しむんだ。
親父が気持ち良さそうに喋ってるのが聞こえてきたが、俺は聞こえないフリに、寝たフリをかました。
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