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「いくわよ」
今年23になった沙璃華は坂本龍馬のような決意を表すと、すっと立ち上がった。
「お姉ちゃん、どこに行くの?」
息子が、ティッシュを鼻に詰めた沙璃華を見上げた。
「コンビニよ」
息子はきょとんとした顔をした。
父親にそっくりだ。
「いや、コンビニへ行くなら、ベニーズへ行きましょう」
父親が手を叩いた。
はい?なんでファミリーでもない見知らぬ親子とファミリーレストランで昼食を摂らなければならないのか。
ただ腹が減っただけじゃないか。
「なっ」
沙璃華は否定しようとしたが、息子もノリノリで、大賛成を身体全体で表現するかのように奇妙なダンスを始めた。
「うまいうまい」
父親はそれを誉めたが、何がうまいのかさっぱり解らない。
うまいということは本物のダンスがあってその物真似がうまいのか、単に父親が子供の書く下手くそな絵をわけもわからず誉めるときの常套手段の“うまい”なのかさっぱりだ。
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