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「わかったわよ、ベニーズに行けばいいんでしょ?」
沙璃華がそう言った途端に二人は申し合わせたかのようにガッツポーズをした。
何だこの親子。
「その代わり、あなたおごってよね?」
沙璃華は不機嫌そうに言うと、ベニーズへ向けて足を踏み出した。
「はい、それはもちろん。でも…」
男はジーパンの右後ろのポケットから財布を出した。
中身を見てから、男は沙璃華を恨めしそうに見つめた。
「今度は何よ」
恨めし顔をなるべく見ないようにして沙璃華は言った。
「すみません、おごれる分のお金まで持ち合わせていなくて」
「はい?じゃあ一体何の因果で自分でお金払って三人でベニーズ行かなきゃならないわけ?」
父親はしょんぼりした顔をした。
「あなた、いくら持ってきたのよ」
「はい、230円少々です」
何をを!
一人分も払えねえじゃねえか。
おごってあげるっていうか、逆におごってもらわないと無理じゃないか。
それに230円少々って何だ?231円から234円の間か?
「無理ね、ベニーズは却下」
父親と息子は落胆の色を見せた。
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