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季節は冬。
枯れ葉の匂いが空風に乗って香る。
まるで無数の乾いた氷の粒が肌を撫でるような12月の昼下がりに、沙璃華(さりか)は公園のベンチに座って考え事をしている。
公園と言っても市が管理している広大な敷地に、広場、ランニングコース、小さな売店、そして大部分は木々に覆われた林で、遊具などは一切ない。
天気予報では午後から夕方にかけて天気は下り坂、傘の準備を、とのことだったが、今のところ空には雲一つない。
沙璃華の心は今の空とは正反対に雲りきっていた。
何故なら今沙璃華の家には“オコトノジ”がいるからだ。
モコモコブーツの裏で枯れ葉を擦った。
乾いた音を立ててそれは葉脈だけを残して粉々になった。
「くっそぉ」心の中で舌打ちをし、粉々になった葉っぱの残骸を前に蹴り出した。
それは宙を舞い、冬の空風に飛ばされて消えた。
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