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一瞬目の前が暗くなった。
頭がクラクラする。
ついに頭までやられてしまったというのか。
「すみませーん」
目の前はボヤけていたが、前の方から誰かがこちらに向かってくる。
「すみません、大丈夫ですか?」
おそらく沙璃華と同年代くらいの男が顔を覗きこんでくる。
「あっ」
男が驚いた顔をした。
そしてポケットから何やら白い紙を出して沙璃華の顔を覆った。
「ちょっ、いきなり何するんですかぁ」
沙璃華は横を向いたが、覆われた白い紙はついてきた。
「本当にすみません、鼻に当たっちゃったみたいですね」
男は焦っていた。
確かに鼻がツーンとする。
鼻の辺りがじんわりと暖かい。
「へ?」
沙璃華は顔を覆っている紙を自分の手で外した。
男は咄嗟に手を引っ込める。
白い紙が真っ赤に染まっていた。
「やばっ」心で叫ぶと沙璃華はそれをまた自分の鼻に持って行く。
「すみません、息子が投げたボールが当たってしまったみたいで、何か弁償します」
男は必死に頭を下げた。
後から小さな男の子がこちらに歩いてきた。
どうやら男の息子らしかった。
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