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「そ、そんなに痛かったんですね。本当にごめんなさい。何か、弁償します」 この男、弁償の使い方間違っている。 この場合弁償じゃなくて慰謝料だろう? 男の子は手に持ったサッカーボールを足元に落とすと、それをけりながら元の場所に走っていった。 「あっちょっと」沙璃華は手を伸ばしたが、男の子には届かない。 「すみません、うちの息子、ちょっと障害がありまして」 男は自分の頭をかきながら言った。 「障害?あなた、息子さんのせいにするつもりですか?さっきから聞いてれば全部息子が息子がって、何から何まで息子さんのせいにして」 沙璃華のリミッターは外れかけていた。 抑えていた怒りが爆発した。 「それから弁償って何?わたしの顔を物扱い?ふざけないでよ」 沙璃華はベンチから立ち上がって、鼻と口を覆っていたティッシュをベンチの上に勢いよく投げ捨てた。 水分を多く含んだティッシュは高速で沙璃華の手から発射され、あっという間にベンチに張り付いた。 「あっ」 男が沙璃華の顔前に右手を差し出す。 「何よ」 沙璃華はその手を払った。 「また、鼻血が」 男はそう言うとまたポケットからティッシュを出し、沙璃華の鼻目掛けてまるでピッチャーがボールを投げるようにティッシュを放った。 慌てて沙璃華はそれを手にするとまた自分の鼻を覆う。 「ちくしょー。このままではこの男の思う壷だ」 タイミングをばかばか逃している。
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