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強めの空風が沙璃華に吹き付けた。
「寒いんだよくそぅ」
怒りが収まらない。
空はみるみる暗くなり、風も強くなってきた。
「ごめんなさい。本当に」
男は目の前の怒り狂った猛獣女に成す術を失っているようだった。
「もういいからさっさと息子のとこへ行きなさいよ」
スキニーデニムなんかでくるんじゃなかった。
風が太股を刺してくる。
足先だけ暖かくても意味がない。
枯れ葉がカラカラと音を立てて沙璃華を嘲笑う。
沙璃華はそれをモコモコブーツで蹴散らした。
勢い余ってブーツが足から外れ、前に飛んだ。
そしてそれはそそくさと息子の方へ向かう男の背中に足跡を付け、地面に見事に着地した。
演技も着地も10点満点だと沙璃華は思った。
男にバチが当たったのだ。
男がきょとんとした顔で振り向く。
へっへっへ。
沙璃華は歯を見せ、してやったりという顔を表現した。
男が沙璃華のモコモコブーツを手にしてこちらに向かってきた。
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