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「すみませーん」 げげっ さっきの男と言い訳の種となっている彼の息子がこちらに向かってくる。 「雨宿りさせてください」 「ええっ」 冗談じゃない。 またこの男、言葉の使い方を間違っている。 傘に入るのが雨宿り? ふざけた男だ。 しかも相合い傘になってしまうではないか。 失礼な男と失礼な言い訳の種と三人で相合い傘なんて最悪だ。 「ほら、ショウも傘に入りなさい」 何を?既に自分の傘気取りだ。 沙璃華はライオンが獲物を狙うような目つきをしたが息子には届かなかった。 「あっ、うちの息子、ショウって言うんです、水晶の晶って書くんですよ?」 んなことどーでもいいわ。 三人も入ったせいでモコモコブーツとデニムに雨が降り懸かってるし。 「もーお」心で叫んだが二人は完全に傘の主となっていて一つも動く気配を見せない。 雨は今夜の夜半頃まで続くでしょう。 確か天気予報のお姉は言っていたはずだ。 夜中までこうしていなければならないのだろうか。 いや、そんなことは許さない。 屋根のあるところまで行って、この失礼全国大会の優勝達を置き去りにしよう。
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