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「……は?」
たっぷりとした沈黙を破ったのは、とある少女の間の抜けた疑問符付きの声だった。
その声は空気に溶け、暖かさを帯びた風と混ざり合って空高く飛んでいく。
少女の持つ艶やかな夜色の髪ががふわっと舞い上がって、少し乱れて肩の上に落ちた。
日に日に気温が上がり暖かさが満ちていくが、まだちくりと身を刺す寒さが若干残っている。
頭上にある桜の蕾がその証拠だ。
まだ咲くまでには至っていないが、桃色にふくらんだそれはまもなく訪れる本格的な春の到来を告げていた。
そう、春。
それは希望の季節、新しく始まる季節、真新しい何かが始まる。
そして少女も春を迎えるのに相応しい新しい何かを望んで胸を踊らせていた。
しかし。
──こんな“何か”は望んでいないんだけど!?
本音を心の中で叫んでから、少女は目の前にいる三人へ疑いの眼差しを向けた。
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