居酒屋と行き倒れ

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「ごちそうさまでした」 少女は手を合わせ、ぺこりと頭を下げる。 彼女は結局12杯も白米を平らげてしまった。夜に居酒屋で使う分まで平らげられてしまったので、白米のストックが尽きてしまった。後で買い出しに行かなければならない。 まぁそれは置いとくとしよう。 この少女は何者だ。 食事中、ろくな会話ができていなかった。食べるのに必死だったからであろう事は、容易に想像できたが。 「俺はバン。バン・ヒイラギ。昨日あんたは俺の店で倒れてたんだ。覚えてるか?」 少女はふるふると首を振る。 何だと。 「覚えてないのか?」 「あの…言いにくいのですが…」 「何だ」 少女は一瞬躊躇うと、小さくため息をついてから言った。 「記憶メモリの一部が…破損している様なのです…。キャストとしての基礎データしか残ってなく、自分に関するデータが殆ど消失してしまってます…」 少女は深緑の髪を両手で抱え、目を悲しそうに伏せた。 「それってつまり…俺達人間で言う所の記憶喪失って奴か…」 「はい…」
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