居酒屋と行き倒れ

6/15
前へ
/38ページ
次へ
目をぴったりと閉じていて、意識があるかどうか良く分からない。見ると、見事な色の緑髪は酷く跳ね放題で、体のパーツは傷や泥で見るも無残な状態だった。 この子は…何があったんだ…? 少女の顔を上げたまま、バンはどうしようかと考え込む。 すると、少女の目がゆっくりと開いた。赤くて、深い色。しかしながら、何処か虚ろな雰囲気を漂わせている。 「…」 「気がついたか?」 バンは彼女に声を掛けてみた。が、やはり少女の目は焦点を定めている様ではなく、返事を期待できそうに無かった。 それでも、死に掛けている人間を放っておく訳にもいかないので、バンは何度も何度も声を掛けた。 それでもやはり返事が無いので、「これはもう駄目か…?」と諦めかけたその時、 「助け…て。怖…い。おなか…すいた…」 と少女は呟き、再び目を閉じてしまった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加