4月

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段ボールをベッドにドサッと置き、窓に歩み寄って閉ざされたカーテンを引く  西向きの窓からは、午前中の柔らかな日射しが入り込み室内を照らした  「懐かしい匂い…」 幼い頃に毎日嗅いだ自室の匂いと、庭先の木々達の香り  懐かしさに心が穏やかになる  「さぁー早めに終わらせますか!」 自分自身に気合いを入れ、ベッドに置いた段ボールに向かおうとした時、お隣の二階窓(2つある部屋の片方)右側のカーテンが動いたように見えた  「ん?」 (動いたよね?) 幼い記憶を辿ると、その部屋は当時双子の勉強部屋だった場所… (もしかしたら…夕君か、朝君かな?) 片付けに向かうのを止め、カーテンの部屋を見つめ続けてみた  (誰も居なかったのかなぁ…気のせい…かな…) 諦め、段ボールを開けることにした  瑞穂の影がなくなったのを感じたかのように、その後またカーテンが少し開く… 隙間から覗いた先に  中指でメガネのブリッジを押し上げる青年  「…………」 開け放たれた窓を見つめ口元を綻ばせる 「ミィ…」 昔、呼んでいた幼なじみの呼び名 小学生の頃は 『ミィって呼ぶと猫みたいだな!』 なんて言いながら弟と笑った  『瑞穂は猫じゃないもん!』 なんて、膨れっ面になりながら、戯れてきていた  小学5年生まで一緒に学び、遊び、枕を並べて眠っていたミィ  カーテンから見えた、幼なじみの彼女は、待ち続けた6年の歳月と共に美しく…煌びやかに成長していた  .
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