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「……うわっ!……ちょっ!!」
振り落とされない様に懸命に掴まってはいるが、武器はもう無くなってしまった。
……くそっ……どうしたら……
その時、泣き叫ぶ女の足下に鎌が置いてあるのが見えた。
「……おいっ!その鎌、貸してくれ!早く!!」
その叫びに女はハッと目を見開き足元の鎌を手にすると、それをこちらに向かって勢いよく投げた。
「バカッ!!投げんじゃ……」
鎌はクルクルと回転しながら凄い速さで近付いてくる。
……あんなのキャッチしたら……俺の指が千切れる!!
蒼い顔をしたまま鎌から視線を離せずにいると、次の瞬間……魔物が俺を振り落とそうとより大きく頭を振った。
《ギャアアアア!!!》
そして甲高い悲鳴が響いたかと思うと、魔物は力なくその場に崩れ落ちる。
「……へ?」
魔物から飛び退き上手く地面に着地すると、何が起こったのか分らないまま動かなくなった魔物を見つめる。
……よく見ると魔物の額に鎌が突き刺さっていた。
どうやら彼女が投げた鎌が運よく命中したらしい。
後ろを振り向くとその張本人は、無事だった我が子を愛おしそうに抱きしめている。
……ミラクル。
その光景を見て微かに笑うと、小さく溜息を吐いて頭をボリボリと掻いた。
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