第一話 終わりの始まり

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「流石……ロイ様ですね」 後ろから声が聞こえそっと振り向くと、そこにはクスクスと笑う中年の男が立っていた。 白髪の交じった短い髪に、少し伸びたヒゲ。 「トドメ刺したのは俺じゃないけどね。それに『様』はやめてくれって言ってるだろ……おっちゃん」 少し困った顔をして男を見ると、男はワザとらしく首を横に振って見せた。 「いえいえ。ロイ様を呼び捨てなどにはできませんよ」 「……でもさぁ~」 そう言って眉を顰めて見せると、男はまた可笑しそうにクスクスと笑う。 この村に来て……もう半年。 毎日の様に繰り返される会話。 いつまでも優しい男。 ……俺はこの生活に安らぎを感じている。 ここに居ればいつかは過去の事など忘れられる日が来る。 辛かった事も、悲しかった事も、恐怖も絶望も……ここに居れば薄らいでいく気がした。
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