第二話 旅立ち

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第二話 旅立ち

端の欠けたグラスに水を入れると、そこに可愛らしいピンクの花を挿し、それを古ぼけた小さな棚に置いた。 棚には日光で少し色褪せた写真が飾られている。 その写真には白い美しい馬と……優しく笑う青年が写っていた。 その笑顔は俺の胸を苦しい位に締めつける。 《……この方を死なせるわけにはいかない。……この方は……》 頭の中に遠い記憶の中の声が響き、それと同時に右肩の痣が鈍い痛みを放ち始めた。 右肩を強く押さえたまま、グッと唇を噛み締める。 ……俺は……何のために…… 「……どうかしましたか?」 急に声を掛けられビクッと身を竦めた。 そっと後ろを振り返ると、フライパンを片手にした男が首を傾げて俺を見つめている。 「……いや、なんでもないよ」 そう言ってヘラヘラと笑うと、もうすっかり慣れたボロボロの椅子に腰を下ろした。 男は暫く窺う様に俺を見ると「もうすぐ朝食ができるので、大人しく待っていて下さいね?」と、笑って朝食の支度に戻って行った。
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