弱き人間

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秋も終わりの11月。 村田聡志は街道を歩いていた。 すっかり葉の落ちた鬱蒼たる木々が辺りを囲む。 日は沈みかけ、西にはオレンジ色の綺麗な空が広がっている。 所々に雲が点在し、それもまたオレンジ色に染まっている。 足元には枯れ葉が沢山落ちていて、歩くたびにガサガサと淋しそうな音を鳴らす。 そんな音は気にも留めず、村田は鼻歌を歌いながら趣味の散歩を楽しんでいるのである。 といっても晩秋の北海道は肌寒く、村田はその寒さに震えていた。 「ぅう、寒いな。」 と嘆きつつ辺りの景色を楽しむ。 草が風によって、ゆらゆらと彼を煽るように動いている。 木々は葉を失くしたものの、決して枯れること無く、北海道の厳しい冬に備えているように見える。 (なんて綺麗なのだろう) 村田は周囲の自然に感動した。 自然界は厳しい。時に寒くなったり、暑くなったり、或いは雪や雨が降ったりする。 そんな厳しい天候に立ち向かう逞しき木々。 どんな自然の脅威にも怯むことなくそこにまっしぐらと生える木々。 村田は心打たれた。 (こんな逞しい木々と比べたらなんて人間は脆く、弱いのだろう) 人間は生きていく上で様々な困難や苦しみを味わうのだ。 耐え切れなくなり、時に自殺をしたり、自傷したり、はたまた他人をも傷つけたりする。 逞しい木々と比べれば、人間の苦労とはなんと滑稽なのだろうか。
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