約束_promise the promise

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とりあえず返信は、 ─はい、分かりました。 お手数おかけします─ という返信。 自分でも思うがなんて簡素なんだろうか。 色気も飾り気もない。 私はこの学園を卒業したら引っ越す。 いや、居候しに行く、といった方が正解かもしれない。 進学する学院が近いからというのも勿論ある。 あるが私にとっての一番の目的は〝おにぃちゃん〟に会うためである。 それが私が引っ越す最たる理由である。 今でも覚えている。 私の原点。 だからこそ気が張れる。 あの約束のために私は我慢出来る。 〝強くなったらな〟 その言葉に私は自分の人生と青春を賭す。 そのためには誰にも負けられない。 それが私の〝強さ〟の定義。 ある種の強制力を持った儚い約束事。 〝おにいちゃん〟と出逢ったのは五歳の時。 私がまだ武術というものに対して恐怖心を抱いていた時に出逢ったのだ。 お義父様に似て少しだけ睨んでいるようにもみえる眼。 テキトーに結われた日本人離れした灰色の髪の毛。 どれとっても当時の脆弱な私には〝怖い〟という感情しか抱かせなかった容姿である。 裂帛の掛け声や踏みしめ、軋む床の轟音に毎日私は神野家の居間で怯えていた。 当時の私は男の人が苦手であった。 意地悪はされる。 叩かれる。 怖かった。 お父さん以外の男の人が皆怖かった。 また意地悪をされるんじゃないか、とか。 また叩かれるんじゃないか、とか毎日神野家で怯えていた。 そのときに神野家のお母さん。 ひいてはお義母様が怯える私の頭を優しく撫でてこんな励ましの声を掛けてくれた。 『あのね、深依ちゃん。 深依ちゃんが意地悪されたり、叩かれるのって深依ちゃんが可愛いからちょっかいを掛けちゃいたくなるんだよ? だからね、少しで良いの。 ほんの少しだけで良いから自分の想いを口に出せるように努力してみない? そうしたら世界は意外なほどにガラリと変わっちゃうものなんだよ?』 そんなことを言ってくれた。
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