愛するきみへ

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わたしは灰色の霧の中にいた。 どこ? 頭痛い・・・。 「よぉ、新人」 声がした。 後ろを振り向くと老人が立っていた。 「ここ、どこですか?」 わたしが頭を押さえながら言うと老人は微笑んで 「ここは天国の手前みたいなところです。」 「手前?」 「心残りがある人がくるところです。」 心残り・・・・。 息子のこと。 「さぁ、あなたのお葬式をやっています。見てみなさい。」 「・・・・・。」 わたしは嫌々下を覗いた。 「ママー! 朝ですよ~!おっきですよ~!」 三歳の息子が旦那に抱っこされながら棺のわたしのほっぺをペシペシ叩いている。 「ママ~。」 それを聞いてた訪問者たちが泣きわめいた。 親戚も 友達も 泣きわめいていた。 泣いてないのは三歳の息子だけだった。 「わたし、死んだんだ。」 「そうですよ。心残りがなくなり、上から光りが差し込んだとき、あなたは天国に行けるでしょう。」
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