愛するきみへ

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六歳の誕生日に旦那が女の人を連れてきた。 おそらく再婚するのだろう。 でも息子は人見知りでなかなかその人には懐かない。 彼女は一生懸命息子の心を開こうとがんばっていた。 わたしのお墓にきては 「わたしが必ず幸せにします」と手を合わせていた。 わたしは最初は息子を取られたくないという嫉妬と怒りを感じていたが あまりにも彼女ががんばって息子の心を開こうとしている姿に同情するようになっていた。 だが息子はその人と話しをしなかった。 旦那も再婚を諦めかけていた。 わたしの三年目の命日に 旦那が息子に言った。 「やっぱりママがいいか?」 息子は黙って頷いた。 わたしは嬉しかったけれど複雑だった。 このままでいいわけない。 わたしは死んでしまった。 なにもしてあげられない。 幸い、旦那が見つけてきた彼女はいい人間だし。 再婚するなら彼女に頼みたい。 愛を わたしの分まであげてほしい。 わたしが息子にしてあげたかったことを 生きている彼女に お願いしたかった。
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