一章 冬の日

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『一番初めに気付くべきだったんだ』  三人の中等生がこたつを囲み、息を呑みつつ、手元の封筒へと手をかけた。  ――青山霜-アオヤマソウ-様。と、茶色い封筒の表面には、確かに自分宛であることを大きく自己主張する文字が印刷されている。  中に入っていたのは、薄い紙が数枚。その中の一枚を手に取って広げる。 「青山霜、適正ランク――E? 嘘だ、僕が? まさか……」  手の中の一枚の紙をちぎらない程度に握り締めながら、僕は手を震わせた。  これは、夢か? 幻なのか? 僕にこんな……こんな、いたって普通の結果が返ってくるなんて!!  封筒から紙を取り出したまま固まりそうになった顔を無理やり動かして、天を仰ぐ。  あぁ、神様。お前って奴は本当に…… 「そー君!!」 「うぐっ!」  ぐいっと襟元をつかまれて、視界が一気に下へと引き戻される。  ガクガクと僕を揺さぶり続けながら、隣で自分の封を破いていた金髪の少女は、少し焦りながら、もう一度口を開いた。 「そー君!! 受かりましたよね!?」 「ヒヨ、苦……しい」  そう必死に抗議しながらも、コクリと一度大きく頷いて見せる。 「ほ、ホントですか!?」 「うん……なんとかね」  寒さで凍える、一月。中等部最後の冬。  横から響く幼馴染達の声が、僕には天使の賛美歌のように美しく響く。  日も落ち、雪と雨が混じった微妙な天気の中、各々の自宅に届けられた封筒の中身――合格の証明書と試験の結果を広げて、僕たちはお互いの合格を祝い、讃え合った。
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