一章 冬の日

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「でも、ランクEって所が霜らしいよな」  そう言いはじめたのは、ランクAと書かれた紙を持つ、逆隣に座っていた短髪の男の子。物珍しそうな顔で、ひょいと取り上げた僕の合格通知を覗き込む。 「そ、そんな言い方無いです! 宏章-ヒロアキ-君。底辺付近がそー君のポジションだなんてストレートに言ったら、いくらそー君だって傷ついちゃいますよ!」  あれ? そこまでは言われて無いよね? 確かに、殆ど同義語だった気もするけどさ。 「僕にはヒヨの言葉の方が辛いよ……」 「あ、ご、ごめんなさいそー君。そんなつもりじゃ……」 「おい霜。女の子を苛めるとは、どう言うご身分だ? コラ」  今にも、切腹します! と言い始めそうなくらい一瞬で自分を追い詰めてしまう少女に、それを庇うようにしながら、チョップを打つ少年。 「え、今の僕が悪いの!?」  半ば無理矢理土下座させられそうになるも、まぁ良いか、と思ってしまっていた。  確かに僕にしては珍しくすんなりと決まったと思う。しかも、最先端の試験校。  最悪のビジョンとしては、記入漏れや試験日を間違えたりして普通に軍隊へ徴兵される事まで視野に入れていたくらいだ。  ――だからこそ。 「神様、ありがとう……楽しみだなぁ、高等部」  この時に、気付くべきだったんだ。そう、気付くべきだった。  こんな『幸運』が、僕に簡単に訪れる訳がないんだって――
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