二章 ハジマリ

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「見えたっ!」  港から一直線の並木道を一歩進むたびに、白く、豪奢な門が近づいていた。 「ようやく、校門か」  少し歩幅を緩めて、まじまじとそのいかつい校門を眺めてみる。  門の周りは、高さ五メートル程の真っ白い壁が、世界から学園を切り取るかのようにして立てられており、中を良く見ることが出来ない。  また、足元には、深い溝が掘られてていて、その中を澄んだ水が、ゆっくりと流れていた。  正直な感想として……ここは監獄か? と疑いたくなるような厳重さだ。  まぁ、仮にも試験校。機密漏洩を防ぐ為には、これでも足りないのかも知れないけど。  大きく息を吐き出すと、何かに取り付かれたかの様な重さがずしりと背中に来る。  ここが、僕がこれから三年間お世話になる……なってしまう学園かぁ……って、 「びびってる場合じゃないだろ! 早く行かなくちゃ!!」  二十一世紀の四月八日、僕はここ、白浜学院の門を、生徒として初めてくぐった。  門の先は一面、綺麗に刈り取られた芝が広がっており、その中を申し訳なさそうにコンクリートで舗装された道が、中央に建つ校舎へと伸びている。  球場がいくつも作れそうな程の広大な敷地に建てられた学園は、芝を抜けた後も流石に広々としていて―― 「くそっ! 間に合え!」  僕は、遅刻ぎりぎりのところを、猛ダッシュで学校の教室を目指す。  撤収されそうになっていた中央広場の掲示板でクラスを確認した後、ラストスパートをかけて目的地へと駆け抜けた。
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